【製造部門 事例①】大手食品加工メーカー
企業概要およびプロジェクト導入背景
●事業内容:
食肉加工品の製造および販売/調理加工食品、惣菜類の製造および販売
売上高:約5,200億円
従業員数:約5,300名(プロジェクト実施当時)
1928年(昭和3年)創業の老舗企業であるが、プロジェクトを開始する直前に創業以来初の赤字に転落することが確定する。悪化し続ける業績の立て直しを図る為、その年の下期(10月)よりA社の基幹工場である東京工場にて収益改善プロジェクトを実施。その後、製造子会社(東北工場)、物流部門、豊橋工場でも同様のプロジェクトを実施。
プロジェクト概要
●製造部門:
費目(原材料費・人件費など)別の施策立案による製造原価削減
現地調査およびP/L、B/Sからの問題点洗い出しと費目別に体系的な施策を立案(人員配置の見直し、不良品の削減および外注業務の取り込み、購買部門の取引業者の見直しおよび価格交渉など)し、実施。
●物流部門:
全国物流網の再構築と主要5拠点の物流経費削減による粗利益改善
現状及び予想される今後の荷量、地域別の配送コストを算出し、適正な物流拠点を設定。新しい拠点に基づいた配送ルートを再構築。また、各拠点で費目別の経費見直し(荷捌き人員の配置、配送ルートなど)を実施。
●製造子会社(東北工場):
3期連続赤字企業の単年度黒字化
前年度7.6億円の経常損失を親会社の再建計画(2年間で黒字化)を1年前倒しすることを目標とし、製造部門と同様のスキームを実施。
プロジェクト期間中における業績推移
専務(生産本部長)の認識の変化(当時のコメント)
●1年目:
「当初、目標の達成確度は30%位かなと思っていたが、管理者を中心にして、それぞれの責任に基づいて新たな行動にチャレンジしたら達成できた。正直言って、驚いている。工場を救うのはこのやり方しかない。当社が不調の中、起死回生になりうるプロジェクトだ」
●2年目:
「今回の取り組みでは、全員が危機感を共有しながら展開する事ができた。東北工場の通期利益予測は前年に対し195%、予算に対し141%となり、東北工場だけで、前年比約7億円弱の収支改善が見込まれる。工場が大きく改善することにより、他部門にも相乗効果が表われてきた。最終的には当社として、予算をクリアでき、一気に黒字転換を図れる見込みだ」
●3年目:
「原料高騰の環境下にも関わらず、生産本部だけで前年比40億円以上の利益が出たことが、全社の『V字回復』につながった。生産本部のみならず、本部間に跨る問題解決に焦点をあてたプロジェクトをやるべきだと思うが、会社全体に危機感がまだ足らない。当社の再生にはこの手法しかないと思っているから、自分が社長になったら、すぐに始める」
プロジェクト終了後の経営者の声
当社の基幹工場である東京工場、製造子会社の東北工場、当社3番目の規模を誇る豊橋工場の3つの主工場と物流事業部において、『マネジメント力充実化による収益力向上プロジェクト』を実施した。
東京工場(従業員総数:約1,000名)ではプロジェクト終了後も、対前年比約10億円の利益改善を成し遂げ、東北工場においては2年連続業績が低迷していた製造子会社の飛躍的な業績回復に大きな役割を果たすなど、定量的に目覚しい成果をあげることができた。これは、当社の生産システムと今回のプロジェクトアプローチがうまく結合したためだと捉えている。(この結果として、生産本部だけで前年比40億円以上の利益が出たことが、全社の『V字回復』につながり、創業以来の赤字脱却に大きく寄与した。)
今後も会社を維持・発展させていく為には、“学習と成長の視点”が不可欠であるが、どの工場においても『きらりと光る人財』を見つけられたこと、そういう人財が、現場の社員だけでなくパート・アルバイトも巻き込み、過去の延長線上では到底考えられなかった取り組みや成果を、私の前で自信をもって堂々と語ってくれたことには筆舌に尽くしがたい喜びを感じた。このような人財が当社の次代を担ってくれると確信している。